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株主提案という言葉を聞くと、アクティビストが会社に圧力をかける場面を思い浮かべる人が多いかもしれません。
ただ、実務で大切なのは煽りではなく整理です。株主提案は、特殊な対立局面だけで使われる例外的な制度ではなく、会社法が予定している株主の正式な権利です。法務省の調査研究報告書でも、日本法の株主提案権は、議題追加、議場提案、議案要領通知請求の3つに整理されています。
その一方で、株主提案は誤解も多いテーマです。
よくある誤解は「1%持っていないと何もできない」「保有割合が高いほど何でも提案できる」「株主が言いたいことはそのまま議案にできる」というものです。実際には、事前提案と総会当日の議場提案は別ですし、提案できる内容は株主総会の決議事項かどうかで決まります。
この記事では、株主提案とは何か、何株持っていればできるのか、保有割合で何が変わるのか、どのような内容を提案できるのか、投資家と企業はどこを見るべきかを、制度説明だけでなく実務の目線から整理します。
株主提案は、「大株主だけの制度」でも「何でも言える制度」でもありません。取締役会設置会社で、総会前に議題追加や議案要領通知請求まで含む本格的な株主提案をするには、原則として総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6か月以上継続保有し、株主総会日の8週間前までに請求する必要があります。ここで基準になるのは株数ではなく議決権です。1単元100株・1単元1議決権の会社なら、300個の議決権は通常3万株に相当します。
一方で、保有割合が高いから株主提案の内容自体が広がるわけではありません。会社法303条・304条は、株主が議決権を行使できる事項を前提にしており、取締役会設置会社の株主総会は、法律または定款で定めた事項に限って決議できます。つまり、提案できるかどうかを決めるのは、まずそのテーマが株主総会の決議事項かどうかであり、その次に株主側が必要な要件を満たしているかどうかです。
実務で押さえるべきポイントは3つです。
第一に、「何株あればできるか」ではなく「何議決権あればできるか」で考えること。
第二に、保有割合で変わるのは提案内容そのものより、使える手続の範囲だということ。1%または300議決権で事前提案ができ、3%以上になると株主総会の招集請求まで可能になります。
第三に、株主提案は単なるアクティビストのイベントではなく、資本政策、株主還元、ガバナンス、親子上場、役員構成、情報開示のどこに不満があるかを可視化する制度だということです。
JPXのコーポレートガバナンス・コードも、株主の権利の実質的確保、少数株主の権利行使を事実上妨げない配慮、株主総会を建設的な対話の場とすることを求めています。
株主提案は、実務でひとまとめに語られがちですが、会社法上は3つに分けて理解した方が正確です。
1つ目は、一定の事項を株主総会の目的、つまり議題にするよう請求する権利です。
2つ目は、株主総会の場で、その議題について議案を提出する権利です。
3つ目は、自分が提出しようとする議案の要領を招集通知や参考書類で他の株主にも知らせるよう請求する権利です。
この切り分けが重要なのは、ニュースで「株主提案が出た」と報じられても、実際には何を、どの条文に基づいて、いつ行っているのかで意味が変わるからです。招集通知に載る事前提案なのか、総会当日に議場で出す提案なのかを混同すると、制度理解も会社対応の評価もずれます。
株主提案の中身はさまざまです。増配や自己株買いのような株主還元の提案もあれば、社外取締役の選任や取締役の解任のようなガバナンスの提案もあります。親子上場、資本政策、買収防衛策、情報開示の改善など、会社のどこに問題意識が向いているかで意味は大きく変わります。JPXのコーポレートガバナンス・コードが、株主の権利確保、資本政策、政策保有株式、買収防衛策を重要論点として並べているのも、そのためです。
したがって、投資家が見るべきなのは、株主提案が出たという事実そのものではありません。どの論点に不満が向いているのか、なぜ今その論点が表面化したのかを読むことが重要です。
会社側も、単に賛成か反対かを決めるだけでは足りず、どの経営課題への問題提起なのかを整理する必要があります。

取締役会設置会社で、総会前に議題追加や議案要領通知請求をする株主提案を行うには、原則として、総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6か月以上継続保有している必要があります。そして、その請求は株主総会の日の8週間前までに行わなければなりません。これは会社法303条2項、305条1項ただし書などの枠組みです。
ここで重要なのは、要件が「何株」ではなく「何議決権」かで決まっていることです。会社によって単元株式数が違うため、必要株数は一律ではありません。1単元100株・1単元1議決権の会社なら、300個の議決権は通常3万株ですが、単元株式数が異なれば必要株数も変わります。実務では、必ず対象会社の単元株式数と総議決権数で確認した方が安全です。
要件は「1%以上または300個以上」です。両方を満たす必要はありません。時価総額や株主数が大きい会社では1%が非常に重く見えることがありますが、その場合でも300個以上の議決権で足りるケースがあります。逆に、議決権総数が少ない会社では1%の方が先に要件になることもあります。実務では、まず対象会社の総議決権数を見て、どちらのルートで要件を満たすのかを確認します。
この点は、「1%持っていないから提案できない」と思い込む典型的な罠でもあります。法律上は300個ルートがあるため、上場会社でも1%未満で事前提案が可能な場面はあります。逆に、株数は多く見えても、議決権ベースでは足りていないこともあります。
株主提案というと、1%または300個を持っていないと何もできないように見えますが、そこもやや違います。会社法304条は、株主は株主総会において、株主総会の目的である事項につき議案を提出できると定めています。
つまり、総会当日の議場で、すでに総会の目的事項になっている事項について議案を出す権利は別建てで存在します。もっとも、法令・定款違反の議案や、実質的に同一の議案が過去3年以内に十分な支持を得られなかった場合には制限があります。
したがって、「1%または300個がないと株主提案は一切できない」という理解は正確ではありません。正しくは、事前に招集通知へ載せるような本格的な株主提案には持株要件があり、総会当日の議場提案は別ルールで動くという整理です。実務上の重みは前者の方が大きいですが、制度としては分けて理解した方が正確です。

ここは非常に誤解されやすい論点です。保有割合が高いからといって、株主提案で出せる内容自体が広がるわけではありません。 303条は、株主が議決権を行使できる事項を株主総会の目的とすることを請求できると定め、304条も、株主総会の目的である事項につき議案を提出できると定めています。つまり、提案内容は持株比率ではなく、その事項が株主総会で決議できる事項かどうかで決まります。
実務的に言えば、1%株主でも、要件を満たせば取締役選任、定款変更、剰余金配当、事業譲渡の承認など、株主総会で決議できる事項について提案し得ます。他方で、日々の業務執行そのものを、そのまま株主提案で命じることはできません。したがって、「保有割合が高いほど提案内容が強くなる」というより、「株主総会の権限に属するかどうか」が先に来ます。
保有割合で変わるのは、提案内容そのものよりも、使える少数株主権の範囲です。たとえば、事前の株主提案は原則として1%または300議決権ですが、株主総会そのものの招集請求は原則として総議決権の3%以上を6か月以上継続保有する株主に認められています。つまり、持株比率が上がると、「既存の総会に議題や議案を差し込む」だけでなく、「総会自体の開催を請求する」という別の手段も使えるようになります。
この意味で、保有割合に応じて変わるのは、「何を提案できるか」より「どの舞台を使って会社に向き合えるか」です。1%または300議決権なら既存の総会に議題や議案を載せる権利、3%なら総会招集請求というより強い手段まで視野に入る、という理解の方が実務に合います。
法律上の提案可能範囲は持株比率で大きく変わりませんが、実務上の重みは当然変わります。これは法律が提案内容を変えるからではなく、賛成を集めたときの可決可能性や、会社が無視しにくい度合いが変わるからです。
したがって、投資家は「法的に何ができるか」と「市場実務上どれだけ影響力があるか」を分けて見る必要があります。会社側にとっても同じで、同じ議案でも、提案者の保有割合や他株主の支持状況によって受け止め方は変わりやすいです。

ここは抽象論で終わらせない方が分かりやすい論点です。会社法303条と304条は、株主が議決権を行使できる事項を前提にしています。そして、取締役会設置会社の株主総会は、会社法または定款で定めた事項に限って決議できます。つまり、株主提案で出せるのは、株主総会の決議事項に落ちているテーマが基本です。
具体例として典型なのは、取締役・監査役・会計参与・会計監査人の選任です。これらは会社法上、株主総会決議で選任します。また、役員や会計監査人の解任も株主総会決議事項です。したがって、役員人事に関する株主提案は、株主総会事項である限り制度上は乗りやすいです。
役員人事以外にも、定款変更は株主総会決議で行います。剰余金の配当も典型例ですが、ここは一言注意が必要です。原則として株主総会決議事項として扱われる一方、取締役会設置会社では、定款の定めにより会社法459条ベースで取締役会に権限が委ねられる場面があります。したがって、配当提案が常にそのまま株主総会事項になるとは限らず、実際には会社の機関設計と定款の確認が必要です。さらに、事業の全部の譲渡や重要な一部の譲渡などの事業譲渡等は株主総会決議による承認が必要で、解散も株主総会決議が典型です。
実務的には、ここまで具体例があるとかなり理解しやすくなります。株主提案は「何でも言える場」ではなく、取締役選任・解任、定款変更、配当、事業譲渡、解散のように、法律上もともと株主総会で決めることになっているテーマに乗せる制度だと捉えると整理しやすいです。
逆に、そのままでは出しにくいのが、日々の業務執行そのものです。取締役会設置会社では、株主総会が決議できるのは会社法または定款で定めた事項に限られます。したがって、「この店舗を出店しろ」「この事業から撤退しろ」「この価格改定をしろ」「この人事配置を行え」といった内容は、通常は経営陣や取締役会の業務執行判断に属し、そのままでは株主提案に乗りにくいです。
ここでの実務上の注意点は、言いたいことをそのまま議案にできるわけではないことです。たとえば「資本効率を改善しろ」という問題意識は、それ自体では抽象的でも、剰余金配当議案、定款変更議案、役員選任・解任議案などの形に落とし込まれれば、株主提案として出てくることがあります。株主提案は、意見表明の制度というより、経営への不満を株主総会決議事項に翻訳する制度として理解した方が実務的です。
株主提案は、思いついた要求をいくらでも並べられる制度でもありません。305条は、議案要領通知請求について、10を超える数に相当する議案を制限しています。また、304条・305条6項は、法令・定款違反の議案や、実質的に同一の議案が過去3年以内に十分な支持を得られなかった場合の制限を置いています。
このため、提案側は、法的に通る形に整え、優先順位を付け、他の株主に伝わる議案設計をする必要があります。会社側も、単に面倒な要求として片付けるのではなく、適法性、同一性、議案数、株主総会の権限配分を冷静に見る必要があります。
上場会社実務で典型的なのは、提案株主が要件を満たしていることを確認し、期限までに会社へ請求し、会社が適法性や形式要件を確認したうえで、招集通知や参考書類に反映し、最終的に総会で賛否が問われる流れです。法定期限は総会日の8週間前ですが、JPXのコーポレートガバナンス・コードは招集通知の早期発送と発送前の電子公表を求めているため、実務上はもっと前倒しで動く会社も多いです。
そのため、企業側の論点は単なる賛否ではありません。提案を受けたあと、短期間で論点整理し、株主に説明できる形に落とし込めるかが問われます。説明が弱い会社は、たとえ否決に持ち込めても、翌年以降の対話で不利になりやすいです。

投資家が株主提案を見るとき、最初に確認すべきなのは提案文面そのものより、その背景にある不満の所在です。資本効率への不満なのか、過大な現預金や政策保有株式への不満なのか、役員構成や独立性への不満なのか、親子上場や支配構造への不満なのかで、意味は大きく変わります。JPXのコーポレートガバナンス・コードが、資本政策、政策保有株式、買収防衛策、株主の権利確保を個別論点にしているのも、そのためです。
株主提案は、可決・否決だけで評価すると見誤ります。可決されなくても一定の支持が集まれば、その論点は翌年以降の対話、資本政策の見直し、役員構成の変更、開示改善につながることがあります。したがって、投資家にとっての見どころは勝敗ではなく、会社のどこが突かれているのか、会社がそれにどう応じるのかです。
同じ議案でも、誰がどの程度保有して出しているかで重みは変わります。これは法的な提案可能範囲が変わるという意味ではなく、その提案が他株主の支持をどれだけ集めやすいか、会社がどれだけ重く受け止めるかに影響しやすいという意味です。実務では、提案内容だけでなく、提案株主の持株比率、他株主の支持可能性、過去の賛成率まで合わせて見た方が、案件の温度感をつかみやすいです。
企業側はまず、持株要件、継続保有期間、期限、議案数、法令・定款違反の有無、過去提案との同一性を確認する必要があります。これは会社法上の基本です。
ただし、実務で本当に差が出るのはその後です。形式要件だけを見て、通るか通らないかだけで処理すると、市場との対話で負けやすくなります。重要なのは、なぜその提案が出たのかを経営課題として整理し、反対するなら株主に分かる言葉で理由を説明することです。JPXのコーポレートガバナンス・コードが、株主の権利行使を事実上妨げないことや、株主総会を建設的な対話の場とすることを求めているのは、この視点と整合します。
会社側が誤りやすいのは、「1%しか持っていないなら大した話ではない」と見てしまうことです。法律上、1%または300議決権で事前提案権があり、3%になれば総会招集請求もあり得ます。さらに、保有割合が高くなくても他株主の支持を集める提案は、会社にとって無視しにくい論点になります。したがって、会社側は保有比率だけで軽重を判断するのではなく、提案内容と他株主の受け止め方を合わせて見る必要があります。
株主提案は、少数株主でも会社の議題や議案に影響を与えられる制度ですが、何でも自由にできる制度ではありません。取締役会設置会社で事前に提案するには、原則として総議決権の1%以上または300個以上を6か月以上継続保有し、総会日の8週間前までに請求する必要があります。しかも、見ているのは株数ではなく議決権です。
また、保有割合で変わるのは、提案内容そのものよりも、使える手続の種類です。1%または300議決権なら事前提案、3%なら総会招集請求まで視野に入ります。他方で、何を提案できるかは、持株比率ではなく、そのテーマが株主総会決議事項かどうかで決まります。取締役選任・解任、定款変更、配当、事業譲渡、解散のようなテーマは典型ですが、日々の業務執行そのものはそのままでは出しにくい、という整理です。
結局、株主提案を見るうえで大切なのは、「何株持っているか」だけではありません。何議決権を持っているか、どの手続が使えるか、そもそもそのテーマが株主総会事項か、そして会社のどこに不満が向いているのかまで読んで初めて、実務的な意味が見えてきます。