お電話でのお問い合わせ
03-4361-8745
メールでのお問い合わせ
24時間受付中
お電話でのお問い合わせ
03-4361-8745
メールでのお問い合わせ
24時間受付中
M&Aを進めるなかで、買手候補から売手に対して提出されることがあるのが「意向表明書」です。
意向表明書は、その名のとおり、買手が現時点でどのような条件でM&Aを検討しているのか、その意向を表明するための書類です。
一般的なM&Aでは買手から売手に提出され、買収希望価格、取得対象、M&Aスキーム、デューデリジェンス(DD)の実施方針、想定スケジュールなどが記載されます。
買収の意向を伝えるだけであれば口頭でも可能です。しかし、書面として提出することで、買手がどの時点でどのような条件を提示していたのかを明確にできます。
これは「言った・言わない」という認識の相違を防ぐだけでなく、売手会社が取締役会などで買手候補や取引条件を検討する際の資料としても重要です。
また、意向表明書には「法的拘束力を持たせる場合」と「法的拘束力を持たせない場合」があります。
ここでいう法的拘束力とは何なのか、法的拘束力がなければ意向表明書を提出する意味がないのか、といった点は意外と分かりにくい部分です。
さらに、意向表明書は提出するタイミングによって内容も変わります。
DD前であれば、限られた情報をもとに大枠の条件を提示し、DDや独占交渉へ進むために利用されることがあります。一方、DD後に提出する意向表明書では、調査結果を踏まえ、より詳細な条件が記載されることが一般的です。
本記事では、意向表明書とは何か、法的拘束力とは何を意味するのか、DD前とDD後で何が違うのか、さらに株式譲渡と事業譲渡では何を記載すべきなのかまで、M&A実務に沿って解説します。
意向表明書とは、M&Aにおいて、一般的に買手が売手に対して「現時点では、このような条件で買収を検討しています」という意向を正式に示す書面です。
重要なのは、あくまで「現時点における意向」を表明する書類であるという点です。
一般的には、次のような内容が記載されます。
ただし、意向表明書の内容は、DD前なのかDD後なのかによって大きく変わります。
DD前であれば、対象会社について確認できている情報が限定されているため、買収価格なども暫定的な条件となることが一般的です。
一方、DD後であれば、財務・税務・法務・事業などを調査したうえで提示するため、より最終条件に近い内容を記載できます。
また、意向表明書では法的拘束力の確認も重要です。
法的拘束力を持たせない意向表明書であっても、その書類に意味がないわけではありません。買手がその時点でどのような条件を正式に提示していたのかを記録する資料となり、後に紛争が生じた場合には、交渉経緯や当時の意思を判断する証拠の一つとなる可能性があります。
一方、特定の条項について法的拘束力を持たせて合意した場合には、その内容が法的な義務となり、違反すれば損害賠償などの法的責任が問題となる可能性があります。
したがって、
「正式な意向を書面として残すこと」
と、
「その内容について法的な義務を負うこと」
は分けて考える必要があります。

意向表明書とは、M&Aにおいて、一般的に買手が売手に対して買収に関する現時点の意向や希望条件を示す書面です。
経済産業省・中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、意向表明書について、譲受けの際の希望条件等を表明するために提出する書面と整理されています。また、基本的には法的拘束力を持たないことが多いとされています。
意向表明書には決まった一つの様式があるわけではありません。
案件によって、
などの名称が使われます。
また、「LOI(Letter of Intent)」という名称が使われることもありますが、実務ではLOIが基本合意書を意味する場合もあります。
したがって、書類の名称だけで性質を判断するのではなく、誰から誰に提出され、何が記載され、どこまで当事者を拘束する内容になっているのかを確認することが重要です。
買手が売手に対して、
「3億円程度で買収したいと考えています」
と口頭で伝えること自体は可能です。
しかし、M&Aでは買収価格だけでなく、
など、多くの条件を同時に検討します。
これらを口頭だけで交渉すると、後になって認識の相違が生じる可能性があります。
たとえば、
「3億円と言った」
「3億円とは言っていない」
「3億円は確定価格ではなく概算だった」
「3億円には借入金を含めていた」
といった問題です。
そこで、現時点の条件を書面として整理したものが意向表明書です。
意向表明書は、買手の意思を記録するためだけの書類ではありません。
売手側が、その買手との交渉を次の段階へ進めるか判断するための資料としても利用されます。
特に売手が法人であれば、M&Aについて取締役会などで検討する場合があります。
その際、
「A社が3億円くらいで買収したいと言っています」
という口頭情報だけではなく、
などが書面になっている方が、社内でも検討しやすくなります。
複数の買手候補がいる場合には、それぞれから意向表明書を取得することで条件を比較することもできます。
つまり、意向表明書には、
買手の正式な意向を明確にする
とともに、
売手が次の交渉相手を判断する
という役割があります。
意向表明書を理解するうえで重要なのが、「法的拘束力」です。
法的拘束力とは、簡単にいえば、当事者が合意した内容について法的な義務が生じ、その内容に違反した場合には法的責任が問題となり得ることを意味します。
ここで誤解しやすいのが、「法的拘束力あり」とするためには、意向表明書について定めた特定の法律や、法律上決められた書式が存在するのではないか、という点です。
意向表明書について、「法的拘束力のある意向表明書」という特定の書類形式が法律で定められているわけではありません。
M&Aの当事者が現時点における正式な意向や条件を書面として示し、その内容のうち、どこまでを当事者間の法的な義務とするのかが重要になります。

たとえば、買手が売手に対して、
「対象会社の発行済株式の100%を3億円で取得することを希望する」
という意向表明書を提出したとします。
この買収価格について法的拘束力を持たせていないのであれば、
「現時点では3億円で取得したいと正式に考えている」
という意向を示したことになります。
しかし、
「最終的に必ず3億円で取得しなければならない」
という法的な取引実行義務まで負っているとは限りません。
その後DDを実施して重大な問題が発見されれば、買手が価格の変更を求めることもあります。
また、最終条件について合意できなければ、最終契約に至らない可能性もあります。
一方、一定の事項について法的拘束力を持たせ、当事者間で合意している場合には意味が異なります。
たとえば、
「今後1か月間、売手は他の買手候補とM&Aに関する交渉を行わない」
という独占交渉義務について法的拘束力を持たせて合意したとします。
売手がこれに違反して別の買手と交渉した場合には、契約違反として損害賠償などの法的責任が問題となる可能性があります。
つまり、
法的拘束力なし
現時点における正式な意向や希望条件を示しているものの、その条件どおりに最終取引を実行する義務まで負うとは限らない。
法的拘束力あり
当事者間で合意した事項について法的な義務が生じ、その義務に違反すれば法的責任が問題となる可能性がある。
という違いがあります。
「法的拘束力がないのであれば、口頭で条件を伝えるのと同じではないか」と思うかもしれません。
しかし、法的拘束力がない意向表明書であっても、書面として提出することには重要な意味があります。
第一に、その時点における買手の正式な意向を記録できます。
買手が、
「発行済株式100%を3億円で取得することを希望する」
と書面で提出していれば、少なくともその時点で、買手がどのような条件を正式に提示していたのかを確認できます。
第二に、売手側の意思決定資料になります。
複数の買手候補が存在する場合、それぞれの意向表明書を比較することで、価格だけでなく、資金調達、DD、スケジュール、従業員の処遇などを比較できます。
第三に、後に紛争となった場合、その時点における当事者の意向や交渉経緯を示す証拠の一つとなる可能性があります。
ただし、ここは正確に区別する必要があります。
意向表明書が証拠となり得ることと、意向表明書に記載されたすべての内容について法的な履行義務が発生することは別です。
実際に法的拘束力が認められるかどうかは、
などを踏まえて個別に判断されます。
したがって、
「正式な意向を書面として証明・記録すること」と「その内容について法的な義務を負うこと」は別の問題
と理解することが重要です。
意向表明書では、
「法的拘束力あり」
または、
「法的拘束力なし」
のどちらか一方を、書類全体に適用しなければならないわけではありません。
実務では、買収条件については法的拘束力を持たせず、一部の条項だけに法的拘束力を持たせる設計があります。
たとえば、
といった形です。
これは、意向表明書が「現時点の条件を示す書類」である一方、M&Aを次の段階へ進めるためには、一定の事項について当事者に守ってもらう必要があるためです。
したがって、意向表明書を確認するときには、
「この意向表明書に法的拘束力があるか」
だけではなく、
「どの条項に法的拘束力があり、どの条項にはないのか」
を確認する必要があります。
特にDD前の段階では、買手が対象会社について把握できている情報には限界があります。
たとえば、企業概要書や決算書などを確認し、
「株式価値3億円程度」
と評価したとします。
しかし、その後DDを行った結果、
などの事実が判明する可能性があります。
その場合、買手としては価格や条件を見直す必要があります。
DD前の暫定価格について取引実行まで法的に拘束される設計にしてしまえば、DDによってリスクを確認し、最終条件へ反映する余地が小さくなります。
そのため、DD前の意向表明書では、買収価格や最終的な取引実行義務について法的拘束力を持たせないことが多くなります。
経済産業省・中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、意向表明書は基本的に法的拘束力を持たないことが多いと整理されています。
M&Aでは、DDを実施する前に意向表明書を提出するケースがあります。
中小M&Aガイドライン(第3版)では、企業概要書などの情報を踏まえて暫定的な希望条件を記載し、DDに進む意向を表明する書面を「第一次意向表明書」と呼ぶことがあると整理されています。
この段階では買手が確認できる情報が限られているため、条件も大枠になりやすくなります。
たとえば、
といった内容です。
つまり、DD前の意向表明書は、
「現時点ではこの条件で検討しており、この条件感であればDDを含む次の交渉段階へ進みたい」
という意思を示す意味合いが強くなります。
DD前の意向表明書で実務上重要になるのが、独占交渉権です。
DDには買手側にも相応の時間とコストがかかります。
案件によっては、
などを起用してDDを行います。
買手からすれば、多額の費用と時間をかけてDDを行っている途中で、売手が別の買手と取引を決めてしまえば、それまでのコストが無駄になる可能性があります。
そこで買手は、
「一定期間、他の買手候補とは
交渉しないでほしい」
という独占交渉権を求めることがあります。
独占交渉権は基本合意書で定める方法もありますが、基本合意書を締結する前にDDへ進む案件もあります。
その場合、
買手から意向表明書を提出
↓
売手が条件を検討
↓
売手が応諾書等を提出
↓
独占交渉権を付与
↓
DDを実施
という方法が考えられます。
中小M&Aガイドライン(第3版)でも、買手からの意向表明書に対して売手が応諾書を提出することで、基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱う場合があるとされています。
ここで重要なのは、買手が意向表明書へ一方的に、
「独占交渉期間を1か月とする」
と記載しただけで、当然に売手へ独占交渉義務が発生するわけではないという点です。
売手がその条件に応諾するなど、当事者間で合意が成立しているかを確認する必要があります。
DD後に意向表明書を提出するケースもあります。
中小M&Aガイドライン(第3版)では、DD結果を踏まえて最終的な希望条件等を記載し、譲受けを希望する意向を明確に表明する書面を「第二次意向表明書(最終意向表明書)」などと呼ぶことがあるとされています。
DD前との大きな違いは、買手が対象会社について詳細な情報を確認した後であることです。
DDでは案件に応じて、
などを調査します。
そのため、DD後の意向表明書では、DD前よりも具体的な価格や取引条件を提示できます。

たとえば、DD前の意向表明書で、
「株式価値3億円程度」
と提示したとします。
DDを実施した結果、当初の想定と大きな相違がなければ、3億円を維持する可能性があります。
一方、DDによって想定外の債務やリスクが発見されれば、
3億円
↓
2億8,000万円
など、価格の変更を求める可能性があります。
つまり、
DD前の価格=限られた情報に基づく暫定的な条件
DD後の価格=DD結果を反映した、より最終条件に近い価格
という違いがあります。
売手側も「3億円」という金額だけを見るのではなく、どの段階で、どの情報を前提として提示された価格なのかを確認することが重要です。
DD後には、価格以外の条件も具体化できます。
たとえば、
などです。
ただし、DD後の意向表明書であっても、通常は最終契約書そのものではありません。
最終的な権利義務は、その後締結する株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などで定めることになります。
意向表明書には法律で定められた一律の様式があるわけではありません。
案件の規模、M&Aスキーム、提出時期、売手から求められている情報などによって内容は変わります。
一般的には、次のような事項が検討対象になります。
ただし、株式譲渡と事業譲渡では、特に重視すべき項目が異なります。
株式譲渡では、売手が保有する対象会社の株式を買手が取得します。
そのため、意向表明書では、**「何%の株式を、いくらで取得するのか」**が中心になります。
まず明確にするのが取得対象です。
たとえば、
「対象会社の発行済株式の100%」
なのか、
「対象会社の発行済株式の51%」
なのかでは、取引の意味が大きく異なります。
100%取得であれば既存株主は原則として残りませんが、51%取得であれば残りの株主との共同保有になります。
したがって、取得する株式数・割合を明確にします。
次に重要なのが価格です。
たとえば、
「対象会社の発行済株式100%について3億円を想定する」
といった形で提示します。
DD前であれば、その価格が暫定的なものであることも明確にします。
たとえば、
「本価格は現時点で開示されている資料等を前提としたものであり、DD結果等を踏まえて最終的に協議する」
という考え方です。
同じ3億円でも、何を前提としているのかによって意味が変わります。
たとえば、
などです。
DD後の意向表明書では、価格調整の考え方をより具体的に記載する場合もあります。
買手が、
なども重要です。
特に複数の買手候補がいる場合、価格が高くても資金調達の確実性が低ければ、取引が実行できない可能性があります。
売手にとっては、提示価格だけでなく、資金調達の確実性も重要な判断材料になります。
オーナー企業のM&Aでは、譲渡後の経営方針も重要です。
たとえば、
などです。
売手が価格以外の条件を重視している場合には、買収後の方針を意向表明書で示すことが、買手候補の選定にも影響します。
事業譲渡では、株式譲渡と考え方が異なります。
株式譲渡では対象会社の株式を取得しますが、事業譲渡では会社が保有する特定の事業に関する資産・負債・契約関係などを個別に譲渡します。
そのため、最も重要なのは、
「何を譲渡対象とするのか」
を明確にすることです。
まず、
「○○事業の全部」
「○○店舗に係る事業」
など、対象となる事業を明確にします。
複数の事業を行っている会社の場合には、どの事業まで買手が取得するのかを整理する必要があります。
事業にはさまざまな資産があります。
たとえば、
などです。
これらすべてを買手が取得するとは限りません。
そのため、意向表明書の段階でも、主要な承継対象について考え方を示すことがあります。
負債についても、何を買手が引き受けるのかを整理します。
たとえば、
などです。
どの負債を承継し、どの負債を売手側に残すのかによって、事業譲渡価格にも影響します。
事業を運営するためには、さまざまな契約があります。
たとえば、
などです。
株式譲渡では契約主体である会社自体は変わりません。
一方、事業譲渡では、契約上の地位を買手へ移転するために、契約相手方の同意や契約の再締結などが必要になる場合があります。
そのため、重要な契約を承継できるかどうかは、事業譲渡の実行可能性を左右する重要な論点です。
従業員についても株式譲渡と大きく異なります。
株式譲渡では、対象会社そのものが雇用主として存続するため、株主が変わっても対象会社と従業員との雇用契約は原則としてそのまま継続します。
一方、事業譲渡では、事業が譲渡されたからといって、従業員との雇用契約が当然に買手へ移転するわけではありません。
そのため、
などが重要になります。
特定の従業員が事業価値の重要な部分を占めている場合には、その従業員が買手へ移籍することを取引の重要な前提条件とすることも考えられます。
事業譲渡の場合には、
「対象事業について1億円」
といった形で譲渡希望価格を提示します。
ただし、株式譲渡以上に重要なのが、
「その価格に何が含まれているのか」
です。
同じ1億円でも、
在庫を含むのか
売掛金を含むのか
不動産を含むのか
負債を引き受けるのか
によって、経済的な意味は大きく変わります。
そのため、事業譲渡では価格だけを記載するのではなく、譲渡対象となる資産・負債等の範囲とセットで条件を整理することが重要です。

株式譲渡と事業譲渡の意向表明書を整理すると、重視すべきポイントが異なります。
株式譲渡では、
「対象会社の株式を何%、いくらで取得するのか」
が中心です。
そのため、
などが重要になります。
一方、事業譲渡では、
「どの事業について、何を引き継ぎ、いくらで取得するのか」
が中心です。
そのため、
などの範囲を整理することが重要になります。
意向表明書を作成するときも、同じひな形をそのまま使用するのではなく、M&Aスキームに応じて内容を変える必要があります。
意向表明書を受領すると、最初に目が行きやすいのが買収価格です。
しかし、最も高い価格を提示した買手が、必ずしも最も良い買手とは限りません。
たとえば、
A社:5億円
B社:4億8,000万円
という2つの意向表明書があったとします。
価格だけならA社が有利です。
しかし、A社が、
なのに対し、B社が、
であれば、必ずしもA社の提案が優れているとは限りません。
売手側は、
などを総合的に比較する必要があります。
特にDD前の意向表明書では、提示価格がそのまま最終価格になるとは限りません。
買手が高い価格を提示して独占交渉権を取得した後、DDによってさまざまな問題を指摘し、大幅な価格変更を求める可能性もあります。
そのため、複数の意向表明書を比較するときには、
「提示価格がいくらなのか」
だけではなく、
「その価格がどの程度確度の高いものなのか」
を見ることが重要です。
さらに、資金調達ができずにクロージングできなければ、どれだけ高い価格を提示していても売手にとって意味はありません。
M&Aでは、提示価格と取引実行の確実性をセットで評価する必要があります。
意向表明書と基本合意書は似ていますが、一般的な位置付けは異なります。
意向表明書は、基本的には買手から売手へ提出する書類であり、買手側の意向を示すことが中心です。
一方、基本合意書は、売手と買手の双方が、その時点における基本的な取引条件や今後の進め方について確認・合意するための書類です。
大まかに整理すると、
意向表明書
↓
買手「現時点では、この条件で買収を検討したい」
基本合意書
↓
売手・買手「この条件や進め方を前提として、次の段階へ進む」
という違いがあります。
ただし、実務では書類の名称や使い方が案件によって異なります。
中小M&Aガイドライン(第3版)でも、買手から提出された意向表明書に対して売手が応諾書を提出することで、基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱う場合があるとされています。
したがって、名称だけで判断するのではなく、誰が何を表明し、相手方が何について応諾し、どの部分に法的拘束力を持たせているのかを見ることが重要です。
意向表明書を提出するタイミングやM&Aの進め方は案件によって異なります。
DD前に意向表明書を提出する場合には、たとえば次のような流れが考えられます。
NDA締結
↓
対象会社の情報開示
↓
企業概要書・決算資料等の確認
↓
買手による初期検討
↓
意向表明書提出
↓
売手による条件確認
↓
買手候補の選定
↓
基本合意または意向表明書への応諾
↓
独占交渉
↓
DD
↓
最終条件交渉
↓
最終契約
↓
クロージング
一方、複数の買手候補を競わせる入札形式などでは、
第一次意向表明書
↓
買手候補の絞り込み
↓
DD
↓
第二次意向表明書・最終意向表明書
↓
優先交渉先の選定
↓
最終契約交渉
という流れになる場合もあります。
中小M&Aガイドライン(第3版)でも、暫定的な希望条件を記載してDDへ進む意向を示す第一次意向表明書と、DD結果を踏まえて最終的な希望条件を記載する第二次意向表明書(最終意向表明書)という整理が示されています。
つまり、意向表明書は単なる「買いたいという意思を伝える書類」ではなく、売手がどの買手候補と次のM&Aプロセスへ進むのかを判断するための重要な資料でもあります。
M&Aにおいて、一般的に買手が売手に対して、現時点での買収意向や希望条件を示す書面です。
買収希望価格、M&Aスキーム、取得対象、DD、資金調達、スケジュールなどが記載されます。
一般的なM&Aでは、買手から売手に提出します。
買手が「どのような条件で買収を検討しているのか」を売手に正式に示すためです。
買収意向を伝えること自体は口頭でも可能です。
ただし、書面にすることで、買手がその時点で提示していた条件を明確に記録できます。
また、売手会社の取締役会などで検討する場合や、複数の買手候補を比較する場合にも利用しやすくなります。
意向表明書は基本的に法的拘束力を持たないことが多いとされています。
ただし、すべての条項について一律に法的拘束力を持たせないとは限りません。
買収価格や取引実行義務には法的拘束力を持たせず、独占交渉、秘密保持、費用負担など一部の条項について法的拘束力を持たせることがあります。
当事者間で合意した内容について法的な義務が生じ、その義務に違反した場合に損害賠償などの法的責任が問題となり得ることを意味します。
意向表明書について特定の法律上の書式が存在するという意味ではありません。
また、法的拘束力がない場合でも、意向表明書は、その時点における買手の正式な意向を記録する書面として意味を持ちます。
意味はあります。
その時点における買手の正式な意向や条件を書面として記録でき、売手側の意思決定や買手候補の比較にも利用できます。
また、後に紛争が発生した場合には、その時点でどのような条件が提示され、どのような交渉が行われていたのかを判断する証拠の一つとなる可能性があります。
ただし、証拠となり得ることと、記載内容について法的な履行義務を負うことは別です。
DD前は対象会社について確認できている情報が限定されているため、価格などの条件は暫定的になりやすくなります。
DD後は財務・税務・法務などの調査結果を踏まえているため、より具体的で最終条件に近い内容を提示できます。
意向表明書に独占交渉に関する条件を記載し、売手が応諾するなどして合意することは可能です。
ただし、買手が一方的に意向表明書へ記載しただけで、当然に売手が独占交渉義務を負うわけではありません。
一般的には、意向表明書は買手から売手へ提出し、買手側の現時点の意向を示すものです。
一方、基本合意書は売手と買手の双方が、その時点における基本的な条件や今後の進め方について確認・合意する書類です。
ただし、意向表明書に売手が応諾することで、基本合意に近い状態を作る場合もあります。
変わります。
株式譲渡では、取得する株式数・割合や株式譲渡価格が中心になります。
事業譲渡では、対象事業に加えて、承継する資産・負債・契約・従業員などの範囲を明確にすることが重要になります。
意向表明書とは、M&Aにおいて、一般的に買手が売手に対して現時点の買収意向や希望条件を正式に示す書類です。
その本質は、**「現時点における意向を表明すること」**にあります。
そのため、意向表明書に「3億円で取得することを希望する」と記載されていたとしても、それだけで最終的に3億円でM&Aを実行する義務が生じるとは限りません。
特にDD前であれば、
限られた情報を確認
↓
暫定的な条件を検討
↓
意向表明書を提出
↓
独占交渉・基本合意等
↓
DD
↓
DD結果を反映
↓
最終条件交渉
という流れになるため、意向表明書に記載された条件が変更される可能性があります。
一方、DD後の意向表明書では、対象会社について詳細な調査を行った後であるため、より最終条件に近い内容を提示できます。
また、意向表明書では「法的拘束力」を正しく理解することが重要です。
法的拘束力がない場合でも、意向表明書は、その時点における買手の正式な意向を書面として記録する役割を持っています。
売手会社の取締役会で検討する際の資料となり、複数の買手候補を比較する資料にもなります。また、後に紛争となった場合には、当時の意向や交渉経緯を確認する証拠の一つとなる可能性があります。
一方、法的拘束力を持たせて合意した事項については、当事者に法的な義務が生じ、その違反について法的責任が問題となる可能性があります。
したがって、
正式な意向を書面として残すこと
と、
その内容について法的な義務を負うこと
は明確に分けて考える必要があります。
さらに、意向表明書は株式譲渡と事業譲渡でも内容が異なります。
株式譲渡では、
「対象会社の株式を何%、
いくらで取得するのか」
が中心です。
事業譲渡では、
「どの事業について、どの資産・負債・契約・
従業員を、いくらで引き継ぐのか」
が重要になります。
そして売手側が意向表明書を比較する際には、提示価格だけを見るべきではありません。
価格の前提、資金調達の確実性、DD条件、スケジュール、従業員の処遇、独占交渉条件などを含め、その条件で実際にM&Aを完了できる可能性がどの程度あるのかまで確認することが重要です。
意向表明書は最終契約書ではありません。
しかし、買手がどのような条件でM&Aを検討しているのかを明確にし、売手がその買手との交渉を次の段階へ進めるかを判断するうえで、重要な書類の一つです。