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上場会社が第三者割当による資金調達を発表したとき、「なぜ市場株価より安い価格で特定の投資家に株式を発行するのか」と疑問に思うことがあります。
たとえば、市場では1株1,000円で取引されているにもかかわらず、第三者割当では900円や950円で新株が発行されるケースがあります。
一方、第三者割当には、普通株式を直接発行する方法だけでなく、新株予約権を発行する方法もあります。
この2つは同じ「第三者割当」であっても、価格の考え方が大きく異なります。
普通株式を第三者割当する場合に重要なのは、普通株式の発行価額です。
これに対して新株予約権を第三者割当する場合には、新株予約権そのものの発行価額と、将来株式を取得するときの行使価額を分けて考える必要があります。
さらに、発行会社と割当先では価格に対する考え方も異なります。
発行会社は、必要な資金を調達しながら既存株主の希薄化をできるだけ抑えたいと考えます。一方、割当先には市場で株式を購入するという選択肢もあるため、第三者割当を引き受けるのであれば、それに見合った投資条件を求めることになります。
本記事では、まず普通株式の第三者割当と新株予約権の第三者割当を明確に分け、そのうえで発行価格の決まり方、ディスカウント、有利発行、公募増資との違い、希薄化、株価への影響まで解説します。
第三者割当による資金調達を理解するうえで、最初に押さえておきたいのは、普通株式と新株予約権では価格の考え方が異なるということです。
普通株式の第三者割当では、現在の市場株価を重要な基準としながら、発行会社と割当先との交渉を踏まえて1株当たりの発行価額を決定します。
日本証券業協会の「第三者割当増資の取扱いに関する指針」では、原則として、取締役会決議の直前日の株価の90%以上を払込金額とする考え方が示されています。株価や売買高の状況などを勘案して合理的な場合には、最長6か月の適切な期間の平均株価を基準とすることもできます。
一方、新株予約権の第三者割当では、
①新株予約権そのものの発行価額
と、
②株式を取得するときの行使価額
という2つの価格があります。
発行会社は新株予約権を発行した時点で「新株予約権の発行価額×発行個数」を調達し、その後、新株予約権が行使されれば「行使価額×行使対象株式数」を追加で調達します。
ただし、新株予約権は必ず行使されるとは限りません。
そして、第三者割当を評価する際に最も重要なのは、ディスカウント率だけではありません。
既存株主にとっての本質的な問題は、
第三者割当によって生じる希薄化などの不利益を上回る株主価値を、調達資金によって生み出せるのか
という点です。
「何%安く発行したのか」だけではなく、「なぜその条件で資金を調達し、その資金を何に使い、将来どの程度の企業価値向上が期待できるのか」まで見る必要があります。

第三者割当とは、会社が新たに発行する株式や新株予約権などを、不特定多数の投資家ではなく、特定の第三者に割り当てる方法です。
東証の第三者割当に関する制度でも、対象となる「募集株式等」には募集株式だけでなく、募集新株予約権も含まれています。
第三者割当の目的には、
などがあります。
ただし、同じ第三者割当でも、普通株式と新株予約権では資金調達の仕組みが異なります。
まず、この違いを整理します。
普通株式の第三者割当は、会社が新たな普通株式を発行し、特定の割当先に取得してもらう方法です。
たとえば、
市場株価:1,000円
発行価額:950円
発行株式数:100万株
だったとします。
割当先が払い込む金額は、
950円×100万株=9億5,000万円
です。
発行会社は原則として、この払込みによって9億5,000万円を調達します。
同時に100万株の新株が発行されるため、既存株主の持株比率や議決権比率は低下します。また、利益が変わらないまま発行済株式数が増えれば、EPS(1株当たり利益)も低下します。
つまり、普通株式の第三者割当では、
普通株式を発行
→ 割当先が発行価額を払い込む
→ 発行会社が資金を調達
→ 発行済株式数が増加
→ 希薄化が発生
という流れになります。
普通株式の第三者割当を見る場合には、基本的に「1株いくらで発行するのか」が価格面の中心的な論点になります。
新株予約権の第三者割当は仕組みが異なります。
会社は最初から普通株式を発行するのではなく、まず特定の割当先に将来、一定の条件で株式を取得できる権利を発行します。
その権利が新株予約権です。
新株予約権では、資金が会社に入るタイミングが大きく2回あります。
たとえば、
新株予約権の発行価額:500円
発行個数:1万個
であれば、
500円×1万個=500万円
が発行会社へ払い込まれます。
これは、割当先が新株予約権という「権利そのもの」を取得するために支払う対価です。
次に、新株予約権の保有者が権利を行使すると、行使価額に基づいて株式を取得します。
たとえば、
1個当たりの対象株式数:100株
行使価額:1,100円
新株予約権:1万個
とします。
すべて行使された場合の対象株式数は、
100株×1万個=100万株
です。
したがって、すべて行使された場合には、
1,100円×100万株=11億円
が追加で会社へ払い込まれます。
つまり、新株予約権による資金調達は、
発行時:新株予約権の発行価額×発行個数
と、
行使時:行使価額×実際に行使された対象株式数
という2段階で考える必要があります。
東証の適時開示基準でも、新株予約権については、払込金額だけではなく、新株予約権の行使に際して払い込まれる金額も合わせて取り扱う仕組みになっています。
ただし、後者はあくまで新株予約権が行使された場合に入ってくる資金です。
すべての新株予約権が行使される保証はありません。
ここが、普通株式の第三者割当との大きな違いです。
ここからは、まず普通株式の第三者割当に限定して、発行価額の決まり方を見ていきます。
普通株式の第三者割当における発行価額は、市場で自動的に決まるものではありません。
基本的には、市場株価を重要な基準としながら、発行会社と割当先との交渉を踏まえて決定されます。
発行会社側では、
などを考慮します。
一方、割当先では、
などを考えます。
こうした双方の事情を踏まえて交渉し、最終的な発行価額が決定されます。
したがって、
市場株価=発行価額
と必ずしもなるわけではありません。
しかし、
発行会社と割当先が合意すれば、どのような価格でもよい
というわけでもありません。
特に上場会社では市場株価という客観的な価格が存在するため、市場価格と大きく異なる価格で特定の第三者に株式を発行する場合には、その必要性や合理性が重要になります。
上場会社の普通株式を第三者割当する場合、最も重要な参考価格となるのが市場株価です。
ただし、「市場株価」といっても、必ず一つの時点だけを見るわけではありません。
最も基本となる基準です。
日本証券業協会の指針では、原則として、株式発行に係る取締役会決議の直前日の価額の90%以上を払込金額とする考え方が示されています。
直前日の株価だけでは、一時的なニュースや需給による変動の影響を大きく受ける場合があります。
そこで、
などの株価水準も参考にされることがあります。
日本証券業協会の指針では、直近日や直前日までの株価・売買高の状況などを勘案し、合理的な場合には、取締役会決議日から最長6か月遡った適切な期間の平均株価の90%以上とすることも認められています。
ただし、会社にとって都合のよい期間を自由に選択できるという意味ではありません。
平均株価を使用する場合には、なぜ直前日の株価を基準にしないのか、なぜその期間を採用したのかについて適切な説明が必要です。
したがって投資家は、
発行価額だけでなく、その発行価額を算定する基準としてどの株価を採用したのか
まで確認する必要があります。

普通株式の第三者割当では、発行会社と割当先の利害は必ずしも一致しません。
たとえば10億円を調達するとします。
1株1,000円で発行できれば、
10億円÷1,000円=100万株
を発行すれば足ります。
一方、1株800円なら、
10億円÷800円=125万株
を発行する必要があります。
同じ10億円を調達する場合、発行価額が低くなるほど多くの株式を発行しなければなりません。
その結果、
などへの希薄化圧力が大きくなります。
そのため、発行会社としては、必要な資金を確保しながら、可能な限り高い価格で発行して希薄化を抑えることが基本的には望ましいと考えられます。
一方、割当先には別の選択肢があります。
市場でその会社の株式を購入することです。
たとえば、市場株価が1株1,000円なのに、第三者割当の発行価額が1,050円だったとします。
他の条件が同じなら、市場で1,000円で取得できる株式を第三者割当で1,050円払って取得する経済的なメリットは基本的にありません。
市場価格と同額の場合でも、純粋な投資採算だけを考えれば、
「市場で買えばよい」
という選択肢があります。
そのため、割当先には、市場価格よりも有利な条件を求める経済的な動機が生じます。
もっとも、
といった場合には、市場価格と同額以上であっても第三者割当を選択する合理性が生じることがあります。
したがって、第三者割当の価格交渉では、
希薄化を抑えたい発行会社 と、 市場取得という選択肢も踏まえて投資採算を確保したい割当先
との調整が必要になります。

普通株式の第三者割当では、市場株価より低い価格で株式を発行することがあります。
これがディスカウント発行です。
日本証券業協会の指針では、原則として、取締役会決議の直前日の株価の90%以上を払込金額とする考え方が示されています。
たとえば直前日の終値が1,000円なら、
1,000円×90%=900円
です。
そのため、「市場株価から10%以内」という水準は、普通株式の第三者割当における重要な実務上の目安の一つになります。
ただし、
10%までなら自由にディスカウントできる
という意味ではありません。
また、
10%を超えたら第三者割当ができない
という意味でもありません。
指針上も、会社法に基づく株主総会の特別決議を経て株式を発行する場合は、この90%以上という取扱いの適用対象外とされています。
そこで問題になるのが「有利発行」です。
普通株式の第三者割当において、特定の第三者に「特に有利な金額」で株式を発行する場合には、有利発行の問題が生じます。
市場で1,000円程度で取引されている株式を、合理的な理由や必要な手続なく特定の第三者だけに500円で大量に発行すれば、割当先には大きな経済的メリットが生じます。
一方、既存株主は大きな希薄化を受ける可能性があります。
そのため、公開会社が特に有利な払込金額で募集株式を発行する場合には、会社法上、原則として株主総会の特別決議が必要になります。
ここで重要なのは、
10%以内=有利発行ではない
10%超=必ず有利発行
と機械的に判断するものではないことです。
市場株価、株価推移、発行会社の財務状況、資金調達の必要性、発行条件などを踏まえて判断する必要があります。

10%を大きく超えるディスカウントによる第三者割当の分かりやすい事例として、2026年のアクセルマークとコンヴァノの取引があります。
コンヴァノは、アクセルマークが実施する第三者割当により、普通株式4,500万株を1株20円、総額9億円で引き受けることを2026年5月29日に公表しました。
第三者割当後、コンヴァノの議決権比率は68.90%となる計画です。
コンヴァノの補足説明資料では、この1株20円という発行価額について、アクセルマークの臨時株主総会における特別決議による有利発行の承認等を前提とした「有利発行価格」であることが明示されています。
つまり、
市場価格から10%を超えてディスカウントすると第三者割当ができなくなる
わけではありません。
大幅なディスカウントを行う場合には、その必要性や合理性を検討し、有利発行に該当するのであれば、株主総会の特別決議など必要な手続を経たうえで実施することになります。
この事例からも、「10%」は絶対的な上限ではなく、通常の第三者割当を考えるうえでの重要な実務上の目安として理解する方が適切です。

ここからは、新株予約権の第三者割当に限定して説明します。
普通株式では「1株いくらで発行するか」が中心的な論点でした。
一方、新株予約権には、
新株予約権そのものの発行価額
と、
普通株式を取得するときの行使価額
があります。
この2つを混同すると、新株予約権による資金調達を正しく理解できません。
新株予約権の発行価額は、
将来、一定の条件で株式を取得できる権利そのものの価格
です。
そのため、
「行使価額の何%を発行価額にする」
という単純な方法で決めるものではありません。
一般に、
などを踏まえて、新株予約権というオプションそのものの経済的価値を評価します。
案件によっては第三者評価機関による価値算定を行い、その結果を踏まえて発行価額を決定します。
したがって、
「新株予約権の発行価額は行使価額の○%程度が一般的」
という統一的な相場があるわけではありません。
普通株式の発行価額における「市場株価から何%ディスカウント」という考え方を、そのまま新株予約権の発行価額に当てはめるのは適切ではありません。
行使価額とは、新株予約権を持つ投資家が、その権利を使って株式を取得するときに払い込む1株当たりの金額です。
JPXはワラントの行使価額について、発行会社と証券会社との引受契約の調印日当日の取引所終値を基準として、若干のアップ率を乗じて決定するのが一般的と説明しています。
たとえば、
発行時の市場株価:1,000円
行使価額:1,100円
という新株予約権を考えます。
市場株価が900円なら、1,100円を払って株式を取得するより、市場で900円で購入した方が安いため、通常は新株予約権を行使する経済的なメリットはありません。
一方、市場株価が1,500円まで上昇すれば、1,100円で株式を取得できる権利には大きな経済的価値が生じます。
なお、新株予約権には行使価額が固定されるものだけでなく、株価に応じて行使価額が修正されるタイプもあります。
そのため、新株予約権の第三者割当を見る際には、単に当初行使価額を見るだけではなく、
まで確認する必要があります。

新株予約権の第三者割当は、一見すると割当先に有利な仕組みに見えることがあります。
株価が上昇すれば新株予約権を行使し、株価が上昇しなければ行使しなければよいためです。
しかし、割当先にリスクがないわけではありません。
なぜなら、割当先は新株予約権を取得する時点で、新株予約権の発行価額を実際に払い込んでいるからです。
この金額は、新株予約権を行使しなかったからといって原則として返還されるものではありません。
たとえば、
市場株価:1,000円
行使価額:1,100円
新株予約権取得コスト:1株相当30円
だったとします。
割当先は最初に30円相当を支払い、
将来1,100円で株式を取得できる権利
を購入しています。
その後、株価が行使期間中ずっと800円や900円程度で推移すれば、1,100円を払って株式を取得する経済的な意味は基本的にありません。
そのまま行使期間が終了すれば、新株予約権は行使されず、割当先は最初に支払った新株予約権の取得コストを回収できない可能性があります。
つまり、新株予約権の割当先は、
「株価が上がらなければ何も失わない」
わけではありません。
新株予約権という権利を購入するために支払った金額を失うリスクがあります。
ここも正確に理解する必要があります。
単純化すれば、新株予約権を行使する経済合理性が生じるのは、
市場株価>行使価額
となったときです。
しかし、投資全体で利益が出る水準は、行使価額より少し高くなります。
割当先は、新株予約権そのものを取得するための費用も支払っているからです。
たとえば、
行使価額:1,100円
新株予約権取得コスト:1株当たり30円相当
なら、単純化した損益分岐点は、
1,100円+30円=1,130円
です。
その他の費用を考慮しなければ、株価が1,130円を上回って初めて、新株予約権の取得コストまで含めた投資全体として利益が生じることになります。
ただし、現在の市場株価が行使価額を下回ったからといって、新株予約権の価値が直ちにゼロになるわけではありません。
行使期間が残っていれば、将来的に株価が上昇する可能性があります。
そのため、新株予約権には残存期間や株価変動率などに応じた「時間価値」も存在します。
最終的に行使期間が終了するまで株価が十分に上昇しなければ、権利が行使されずに消滅する可能性があります。
新株予約権型では、割当先だけでなく発行会社にも普通株式型とは異なるリスクがあります。
最大の違いは、
予定していた資金を全額調達できるとは限らない
ことです。
普通株式の第三者割当であれば、割当先が払込期日に発行価額を払い込むことで、原則として予定した資金を一括で調達できます。
一方、新株予約権の場合、発行時点で会社に入るのは新株予約権そのものの発行代金です。
大部分の資金は、その後、新株予約権が行使されることによって初めて入ってきます。
しかし、株価が行使価額を下回っていれば、割当先が行使しない可能性があります。
したがって、
予定調達額=必ず会社に入ってくる金額
ではありません。
これは、新株予約権による資金調達を分析する際の非常に重要なポイントです。
ここで、公募増資と第三者割当を比較します。
比較するのは、公募増資と普通株式の第三者割当です。
どちらも新しい普通株式を発行して資金を調達するため、発行済株式数が増えれば既存株主には希薄化が生じます。
したがって、
公募増資なら既存株主に不利益がなく、第三者割当だけが既存株主に不利益
というわけではありません。
大きく違うのは価格形成の構造です。
公募増資では、幅広い投資家から需要を集め、市場株価や投資家需要などを踏まえて発行条件を決定します。
一方、第三者割当では、あらかじめ特定された割当先との交渉を踏まえて発行条件を決定します。
つまり、
公募増資:市場・幅広い投資家の需要を踏まえた価格形成
第三者割当:市場株価を基準としつつ、特定の割当先との交渉による価格形成
という違いがあります。
第三者割当では、特定の割当先に大量の株式を発行することもあるため、経済的な希薄化だけでなく、議決権の集中や支配関係の変化も重要になります。
第三者割当が発表されると、
「5%ディスカウント」
「10%ディスカウント」
「有利発行」
といった発行条件に注目が集まりやすくなります。
もちろん、発行価額の妥当性は重要です。
しかし、既存株主の立場から第三者割当を評価する場合、ディスカウント率だけを見るのは不十分です。
本質的に重要なのは、
第三者割当によって既存株主が受ける希薄化などの不利益
と、
調達した資金によって生み出される将来の企業価値・株主価値
を比較することです。
たとえば、第三者割当によって20%の希薄化が生じても、その資金によって高い収益性を持つ事業を買収し、将来的に利益や企業価値が大きく増加するのであれば、既存株主にとってプラスになる可能性があります。
逆に、ディスカウント率が0%であっても、大規模な希薄化が生じ、調達した資金が赤字補填に消え、将来の利益増加につながらないのであれば、既存株主にとって必ずしも望ましい資金調達とはいえません。
したがって、第三者割当を見るときの最終的な問いは、
「何%ディスカウントしたのか」
だけではなく、
「この希薄化を上回る株主価値を生み出せるのか」
です。
特に、
などであれば、第三者割当による希薄化以上の価値を生み出す可能性があります。
一方、
などの場合には、より慎重に見る必要があります。
第三者割当では、発行価額だけでなく希薄化率も重要です。
東証では、第三者割当によって希薄化率が25%以上となる場合、または支配株主が異動することになる場合には、原則として、
または、
のいずれかの手続を求めています。
さらに、希薄化率が300%を超える第三者割当については、株主・投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除き、上場廃止の対象となります。
新株予約権についても、希薄化率を算定する際には潜在株式が考慮されます。行使価額が修正される場合には、下限価額における潜在株式を用いる取扱いとなっています。
つまり、
発行価額が市場価格に近いから問題ない
とは限りません。
発行価額と同時に、
どれだけ株式が増える可能性があるのか
を見る必要があります。
第三者割当は必ず株価の悪材料になるわけではありません。
市場は、発行条件だけでなく、資金調達の目的や将来の企業価値への影響まで評価します。
ただし、普通株式と新株予約権では見るべきポイントが異なります。
主に確認したいのは、
です。
市場株価を大幅に下回る価格で大量の新株を発行すれば、既存株主に不利な条件として株価が下落する可能性があります。
一方、有力企業との資本業務提携や、成長性の高いM&Aを目的とする資金調達であれば、将来の企業価値向上への期待からポジティブに評価される可能性もあります。
新株予約権では、
などを見る必要があります。
特に、割当先が新株予約権を行使して取得した株式を市場で順次売却する場合には、
新株予約権の行使
→ 新株発行
→ 市場で株式売却
という流れが繰り返される可能性があります。
その結果、継続的な売り圧力が株価の上値を抑えることがあります。
第三者割当のIRが発表されたら、最初に確認することがあります。
普通株式の第三者割当なのか、新株予約権の第三者割当なのか
です。
ここを分けるだけでも、IRをかなり読みやすくなります。
まず、
発行価額はいくらか
を確認します。
次に、
どの市場株価を基準にしているか
を確認します。
そのうえで、
何%のディスカウントになっているか
を計算します。
さらに、
を確認します。
最後に最も重要な、
調達した資金を何に使うのか
を確認します。
最初に、
新株予約権そのものの発行価額
を確認します。
次に、
行使価額
を確認します。
さらに、
固定行使価額なのか、行使価額修正型なのか
を確認します。
修正型であれば、
市場価格に対して何%で修正されるのか
下限行使価額はいくらか
まで確認します。
そのうえで、
最大で何株発行されるのか
最大希薄化率はいくらか
行使期間はいつまでか
割当先は取得した株式をどうする予定なのか
を確認します。
最後に普通株式の場合と同じく、
調達資金によって希薄化以上の企業価値を生み出せるのか
を考えます。
正確ではありません。
日本証券業協会の指針では、原則として直前日の株価の90%以上という基準が示されていますが、「10%なら理由なく自由に安くできる」という意味ではありません。
これも正確ではありません。
有利発行に該当する場合でも、株主総会の特別決議など必要な手続を経て実施されるケースがあります。
アクセルマークの事例はその分かりやすい例です。
異なります。
発行価額は、新株予約権という権利そのものを取得するために支払う価格です。
行使価額は、その権利を使って普通株式を取得するときに払い込む1株当たりの金額です。
これも正確ではありません。
割当先は最初に新株予約権の発行価額を支払っています。
行使期間中に株価が十分に上昇せず、新株予約権を行使しないまま権利が消滅すれば、最初に支払った取得コストを回収できない可能性があります。
必ずしもそうではありません。
ディスカウント率が低くても、大規模な希薄化が生じ、その資金によって十分な企業価値向上が実現できなければ、既存株主にとって不利になる可能性があります。
逆に、一定のディスカウントや希薄化があっても、それ以上の企業価値向上が期待できるのであれば、既存株主にとって合理的な資金調達となる可能性があります。
第三者割当の発行価格を理解するうえでは、最初に、
普通株式の第三者割当
と、
新株予約権の第三者割当
を明確に分ける必要があります。
普通株式の場合には、市場株価を重要な基準としながら、発行会社と割当先との交渉を踏まえて1株当たりの発行価額を決定します。
発行会社は必要資金を確保しながら希薄化を抑えたい一方、割当先には市場で株式を購入するという選択肢があります。
そのため、第三者割当では、
できるだけ高く発行したい発行会社
と、
投資採算を確保できる条件で取得したい割当先
との交渉が発生します。
日本証券業協会の指針では、普通株式について原則として直前日の株価の90%以上という考え方が示されていますが、10%が絶対的な上限というわけではありません。必要な手続を経て有利発行が行われるケースもあります。
一方、新株予約権では、
新株予約権そのものの発行価額
と、
株式を取得する際の行使価額
を分けて考える必要があります。
発行会社はまず、
新株予約権の発行価額×発行個数
を調達します。
その後、新株予約権が行使されることで、
行使価額×行使対象株式数
を追加で調達します。
ただし、すべての新株予約権が行使されるとは限りません。
割当先も最初に新株予約権の取得コストを負担しており、株価が十分に上昇しないまま行使期間が終了すれば、そのコストを回収できない可能性があります。
そして、普通株式でも新株予約権でも、投資家が最終的に考えるべきことは同じです。
「何%ディスカウントされているか」だけではなく、「第三者割当による希薄化などの不利益を上回る株主価値を、その資金調達によって生み出せるのか」
ここまで確認することが、第三者割当を評価するうえで重要です。