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この記事で扱うのは、M&Aの初期打診、IM開示、DD、条件交渉などで用いられるNDAを前提とした論点です。中小M&Aガイドラインでも、NDAは譲渡側と譲受側の間だけでなく、仲介者・FAとの間でも締結されることが示されています。
M&A実務では、当事者本人だけで案件を進めることはほぼありません。M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士、金融機関、社内役員・従業員などが情報に触れるのが通常です。
だからこそ、NDAでは「専門家に開示してよいか」より、専門家等に開示することを前提に、漏洩したとき誰がどこまで責任を負うのかが重要になります。中小M&Aガイドラインでも、最終契約やリスク事項では専門知見を有する弁護士等への相談が望ましいとされています。
M&AのNDAで、受領当事者がM&Aアドバイザー、公認会計士、弁護士、役員・従業員、子会社などに秘密情報を開示する場合、実務上もっともバランスがよいのは、受領当事者が「必要な範囲内で」開示できる一方、その開示先の選定・開示範囲・管理について一次的な責任を負う、という整理です。中小企業庁の秘密保持契約書サンプルでも、役員・従業員、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、FAその他のアドバイザー等への開示を認めつつ、その者の違反について受領当事者が責任を負う建て付けが示されています。
もっとも、契約当事者ではない専門家の行為まで、受領当事者が常に無制限の結果責任を負うべきだとまでは言い切れません。 法律上は、まず実際に漏洩した本人に責任が生じ得ます。
NDAに第三者責任条項や損害賠償条項があれば、まずその契約条項に従って受領当事者の契約責任が問題になります。条項がなくても、必要な範囲を超えて開示した、適切な管理をしていなかった、守秘義務のない者に見せたといった事情があれば、民法415条の債務不履行責任が問題になり得ます。また、実際に漏らした第三者本人には、民法709条の不法行為責任が成立し得ます。
この論点は、感覚的に議論すると噛み合いません。整理すると、主に次の5つです。

典型は、役員・従業員、M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士、金融機関、子会社などのグループ会社です。中小企業庁の秘密保持契約書サンプルでも、役員・従業員に加え、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、FAその他のアドバイザーが例示されています。
ノンネーム段階の概要情報なのか、IMレベルなのか、DD資料まで含むのかでリスクは大きく違います。中小M&Aガイドラインでも、NDA締結後に企業概要書などが提示される流れが示されています。
単に「見せる」だけなのか、必要な範囲内に限定するのか、アクセス権限管理をするのか、再開示を禁止するのかが問題になります。秘密情報の目的外利用や第三者開示の制御は、一般的な秘密保持契約でも中心論点です。
開示先が漏洩したときに、受領当事者が一次的に責任を負うのか、漏洩した本人に直接責任を追及すべきなのか、またはその両方なのかが論点です。今回の記事の中心はここです。
これは特に当事者間NDAで重要です。M&A検討の名目で得た情報を、営業、競争、採用引抜きなどに使わせないという論点です。秘密保持契約のひな形でも、目的外利用の禁止は中核条項です。

M&A専門会社、仲介会社、FAとのNDAでは、まず問題になるのは、誰にまで見せるのかです。担当者個人だけでなく、社内の他担当者、上司、外部専門家、買手候補への打診先まで広がる可能性があるからです。中小M&Aガイドライン第3版でも、仲介者・FAの実務運用や情報の取り扱いに関する規律強化が示されています。
この類型では、開示可能先の範囲、必要な範囲内での開示、情報管理方法、漏洩時の一次責任が特に重要です。
つまり、営業で使われるかより、どこまで横流しされるか、誰が責任を持って管理するかが中心になります。
一方、買手候補と売手、または株主個人と買手候補のような当事者間NDAでは、開示先の問題に加えて、その情報を営業や競争にどこまで使わせないかが大きな論点になります。なぜなら、当事者そのものが競争相手や潜在的な営業主体であることがあるからです。目的外利用の禁止は、秘密保持契約実務の中心論点でもあります。

いちばん基本なのは、実際に情報を漏らした本人です。
その本人がNDAの契約当事者であれば、まず契約違反として責任を負います。
契約当事者でなくても、故意または過失で他人の権利・法律上保護される利益を侵害すれば、民法709条の不法行為責任を負い得ます。
つまり、「専門家だから契約当事者ではない=無責任」ではありません。
ここが実務上の争点です。
NDAに、開示可能先に対して同等の守秘義務を課し、その違反については開示した当事者が責任を負うという条項があれば、契約上はその当事者が相手方に対して責任を負いやすいです。中小企業庁の秘密保持契約書サンプルはこの建て付けです。
逆に、NDAにそこまで明確な第三者責任条項や損害賠償条項がない場合でも、
という事情があれば、受領当事者自身の契約違反として責任を負う余地があります。民法415条は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、債権者は損害賠償を請求できると定めています。つまり、条項がなくても安全とは限らず、管理の仕方自体が責任の根拠になり得るということです。
NDAに損害賠償条項がある場合は、まずその条項の文言が出発点になります。
たとえば、
一方、損害賠償条項がなかったとしても、秘密保持義務や第三者開示制限義務そのものに違反していれば、直ちに責任がゼロになるわけではありません。秘密保持義務も契約上の債務なので、その不履行があれば、民法415条に基づく債務不履行責任として損害賠償請求が問題になります。つまり、損害賠償条項は責任を「作る」条項というより、責任の範囲や処理方法を「調整する」条項と理解した方が正確です。
ただし、契約当事者でない専門家の行為まで、受領当事者が常に無制限の結果責任を負うべきだとは言い切れません。弁護士や公認会計士などは、もともと法令や職業倫理上の守秘義務を負っているからです。中小企業庁のサンプルも、少なくとも同様の秘密保持義務を法令または契約に基づき負担する場合に限って開示を認める建て付けです。
そのため実務では、受領当事者に無限定の結果責任を負わせるというより、
理由は単純です。当事者だけでは案件が進まないからです。法務DDでは弁護士、財務・税務DDでは公認会計士や税理士、プロセス管理や条件調整ではFAが関与するのが通常です。中小企業庁のサンプルでも、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、FAなどへの開示が想定されています。
逆に、これらの専門家を開示可能先に入れないと、案件の実行可能性が大きく下がります。だからNDAでは、必要な範囲内で専門家等に開示できることを前提にしつつ、責任配分を設計するのが実務です。
ここで「必要な範囲内で」という言葉はかなり重要です。
開示可能先を広く書きすぎるより、必要な範囲内での開示に限定する方が、管理面でも責任面でもバランスが取りやすいです。
実務でかなり多いのは、**「一定の専門家等への開示を許す」「その開示先は同等の秘密保持義務を負う」「その違反については開示した当事者が責任を負う」**という構造です。中小企業庁の秘密保持契約書サンプルは、まさにその形で、合理的に必要な範囲内で弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、FAその他のアドバイザーに開示できるとした上で、違反した者に対して秘密情報を開示した当事者が自ら責任を負うとしています。
この構造の良いところは、開示当事者から見て分かりやすいことです。「誰に漏れたのか分からない」「専門家のせいだと言われる」という逃げ道をふさぎやすいからです。
つまり、情報を受け取った側に一元的な管理責任を持たせる発想です。
開示可能先は、何でも入れればよいわけではありません。
役員・従業員、子会社などのグループ会社、弁護士、公認会計士、税理士、FAなど、必要な範囲内の者に限定するのが基本です。
「その他関係者」と広く書くと、後で責任範囲が曖昧になります。
実務では、開示先が法令または契約で同等の秘密保持義務を負っていることを条件にするのが重要です。
この条件がないと、「専門家に見せました」で責任の空白ができやすくなります。
バランスがよいのは、受領当事者に無限定の結果責任を負わせるというより、開示先の選定・指示・管理について責任を負わせる整理です。
たとえば、
といった義務を受領当事者に負わせ、その違反があれば責任を負うという考え方です。
M&AのNDAで、開示可能先にM&Aアドバイザー、公認会計士、弁護士、子会社、役員・従業員などを入れること自体は実務上ごく自然です。問題はそこではなく、必要な範囲内で誰に開示し、その開示先をどのように管理し、漏洩時に誰がどこまで責任を負うのかです。

法律上は、まず漏洩した本人が契約責任または不法行為責任を負い得ます。そのうえで、受領当事者は、NDAの第三者責任条項があれば契約上責任を負いやすく、条項がなくても開示・管理が不適切なら自らの契約違反として民法415条に基づく責任を負い得ます。要するに、この論点は「専門家に開示してよいか」の問題ではなく、専門家等への開示を前提に、責任配分をどう設計するかの問題です。M&A専門会社とのNDAなのか、当事者間のNDAなのかでも重心は変わるので、そこまで分けて考えるのが実務的です。
実務では、開示可能先に名前が入っていること自体ではなく、その先に誰が含まれるのか、守秘義務がどうかかっているのか、漏洩時に誰が一次対応し、誰が契約上責任を負うのかまで確認することが重要です。