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M&Aでは、最終契約書を締結した時点ですべての取引が完了するとは限りません。
一般的なM&Aでは、
最終契約締結日(Signing)と
クロージング日(Closing)は別の日
として
設定されます。
最終契約書を締結した後、売主と買主は契約で定められたクロージングの前提条件を満たします。
そして、前提条件が充足されたことを
確認したうえで、クロージング日に株式や事業などの譲渡対象と、その対価となる譲渡代金の決済等を行います。
つまり、
最終契約締結
=M&Aの条件を最終的に契約する日
クロージング
=その契約に基づいてM&Aを実行する日
と考えると分かりやすいでしょう。
たとえば株式譲渡であれば、クロージング日に売主から買主へ対象株式を移転し、買主から売主へ譲渡代金を支払います。
事業譲渡であれば、契約で定めた譲渡対象について必要な移転・承継を実行し、買主が譲渡代金を支払います。
そのため、M&Aの実務では最終契約書を締結することだけではなく、「クロージング日に何を実行するのか」「それまでに何を完了させる必要があるのか」を整理することが重要です。
本記事では、M&Aにおけるクロージングとは何か、最終契約締結との違い、クロージングの前提条件、株式譲渡・事業譲渡で行うこと、必要書類、クロージング当日の流れまで実務的に解説します。

M&Aのクロージングとは、
最終契約書に基づいて株式や事業などの譲渡を実行し、その対価となる譲渡代金の支払いなどを行うことで、M&Aを実行する手続です。
基本的な流れは、
最終契約締結
↓
クロージング前提条件の充足
↓
前提条件の充足確認
↓
クロージング
↓
クロージング後の義務の履行
となります。
最終契約締結日とクロージング日は、同じ日になることもありますが、一般的には別の日として設定されることがあります。
たとえば、
6月1日:株式譲渡契約書を締結
↓
6月1日~6月30日:前提条件への対応
↓
6月30日:クロージング
というスケジュールです。
この場合、6月1日に株式譲渡契約書を締結したからといって、その日に直ちに株式の譲渡が実行されるわけではありません。
契約締結後、必要な前提条件を満たし、6月30日に契約で定めたクロージング手続を行います。
したがって、M&Aでは、
「契約を締結すること」と、
「M&Aを実行すること」
を分けて理解することが重要です。
クロージングとは、M&Aの最終契約書に基づいて取引を実行する手続です。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、最終契約とクロージングは別のプロセスとして整理されており、クロージング当日には譲受側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認する必要があるとされています。また、不動産の所有権移転や担保抹消などがある場合には、登記に必要な書類を授受することもあるとされています。
クロージングの具体的な内容はM&Aの手法によって異なります。
株式譲渡であれば、対象となる株式について必要な譲渡手続を行い、買主が譲渡代金を支払います。
事業譲渡であれば、契約で定めた資産・契約その他の権利義務等について必要な移転・承継手続を行い、買主が譲渡代金を支払います。
したがって、クロージングは単なる「代金支払日」ではありません。
譲渡対象の移転と対価の支払いを中心として、M&Aを実行するために必要な行為を行う手続と理解するのが適切です。

M&Aを理解するうえで特に重要なのが、
最終契約締結日とクロージング日の違いです。
最終契約締結日は、売主と買主がM&Aの最終的な取引条件について契約を締結する日です。
株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書などを締結します。
一方、クロージング日は、その契約に基づいて取引を実行する日です。
つまり、
最終契約締結日
→ 「この条件でM&Aを実行する」と契約する
クロージング日
→ 契約で定めた条件を満たしたうえで、実際にM&Aを実行する
という違いがあります。
英語では、最終契約の締結を「Signing」、取引の実行を「Closing」と呼ぶことがあります。
そのため、
Signing → Closing
という流れを理解しておくと、M&Aの契約実務が分かりやすくなります。
最終契約を締結しても、その時点ですぐにM&Aを実行できるとは限りません。
クロージングまでに行わなければならない手続が残っていることがあるからです。
たとえば、
などが必要になることがあります。
そこで最終契約書を先に締結し、
「これらの条件が満たされたら
クロージングを行う」
という仕組みにします。
最終契約締結からクロージングまでの期間は、この前提条件への対応やクロージング準備を行う期間でもあります。
クロージングの前提条件とは、
売主または買主がクロージングを実行する義務を負うために、クロージングまでに充足されるべきものとして最終契約書で定めた条件です。
英語の「Conditions Precedent」から「CP」と呼ばれることもあります。
具体的な前提条件は案件によって異なりますが、
などがあります。
前提条件については、「M&Aの最終契約書とは何か」「株式譲渡契約書とは何か」「事業譲渡契約書とは何か」でも詳しく解説しています。
最終契約締結からクロージングまでの期間は、単なる待機期間ではありません。
売主と買主は、それぞれ契約上必要な対応を進めます。
たとえば売主側では、
などを行うことがあります。
買主側では、
などを進めます。
そしてクロージング日までに、
前提条件が充足されているかを双方で確認
します。
前提条件が充足されていなければ、契約の定めに従ってクロージングを延期する、前提条件を放棄できる場合には放棄する、解除を検討するといった対応が問題になります。
なお、法令上必要な手続など、当事者間の合意だけでは省略できない事項まで自由に放棄できるわけではありません。
クロージング日に行うことは案件によって異なりますが、基本的には、
売主側
→ 譲渡対象を買主へ移転するために
必要な行為・書類の交付
買主側
→ 譲渡代金の支払い
という関係になります。
ただし、実際にはこれだけではありません。
役員の辞任、株主名簿に関する手続、会社印・通帳・契約書等の引渡し、不動産の登記関係書類の授受など、案件に応じてさまざまな手続を行います。
そのためクロージング前には、
「誰が、どの書類を、いつ、誰に渡すのか」
まで整理しておく必要があります。
株式譲渡では、売主から買主へ対象株式を譲渡し、買主から売主へ譲渡代金を支払います。
具体的な手続は、対象会社が株券発行会社かどうか、対象株式に譲渡制限があるか、契約内容などによって異なります。
たとえば、
などを行うことがあります。
重要なのは、譲渡代金を振り込めばクロージングが終わるわけではないということです。
買主側としては、代金を支払うのと引き換えに、対象株式について必要な権利移転手続が確実に行われる状態を作る必要があります。
事業譲渡では、株式譲渡以上にクロージング手続が複雑になることがあります。
事業譲渡では会社そのものを取得するのではなく、事業を構成する資産・契約その他の権利義務等について、契約で定めた範囲を譲渡・承継するからです。
たとえば、
などが問題になります。
ただし、前の記事「事業譲渡契約書とは何か」で解説したとおり、すべての契約承継等がクロージング日に完了するとは限りません。
重要なものだけを前提条件としてクロージング前に処理し、それ以外についてはクロージング後も売主と買主が協力して承継・切替手続を行う場合があります。
したがって事業譲渡では、
クロージング日と「すべての引継ぎが完了する日」が一致しない場合がある
ことにも注意が必要です。
クロージングを理解するうえで重要なのが、売主と買主の行為をどのような順番で実行するかです。
売主からすれば、
「株式等を渡したのに代金が支払われない」
という状態は避けたいでしょう。
買主からすれば、
「代金を支払ったのに株式等を取得できない」
という状態を避ける必要があります。
そこでクロージングでは、契約上の設計に応じて、譲渡対象の移転に必要な行為と譲渡代金の支払いを相互に確認しながら実行します。
実務では、
書類確認
↓
必要書類の授受
↓
買主による譲渡代金の振込み
↓
売主による着金確認
↓
その他のクロージング手続
といった順序をあらかじめ決めておくことがあります。
中小M&Aガイドラインでも、クロージング当日は譲受側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認する必要があるとされています。

クロージング当日は、案件によって異なりますが、一般的には次のような流れで進めます。
①前提条件の最終確認
まず、最終契約書で定めたクロージング前提条件が充足されているか確認します。
↓
②クロージング書類の確認
売主・買主がそれぞれ交付すべき書類が揃っているか確認します。
↓
③譲渡対象の移転に必要な手続
株式譲渡であれば株式の譲渡に必要な手続、事業譲渡であれば対象資産等の移転・引渡しに必要な手続を行います。
↓
④譲渡代金の支払い
買主が売主へ譲渡代金を支払います。
↓
⑤着金確認
売主が指定口座への入金を確認します。
↓
⑥その他のクロージング手続
役員辞任、会社関係資料の引渡し、登記関係書類の授受など、案件ごとに必要な手続を行います。
↓
⑦クロージング完了の確認
双方で必要な手続が完了したことを確認します。
実際には、銀行振込の時間、登記手続、書類の授受方法などを考慮して順序を調整します。
クロージングに必要な書類は、M&Aの手法や案件によって大きく異なります。
株式譲渡では、たとえば、
などがあります。
事業譲渡では、
などが考えられます。
不動産の所有権移転や担保抹消等がある場合には登記手続が必要になることがあり、中小M&Aガイドラインも、クロージングにおいて登記必要書類の授受等を行う場合があるとしています。
M&Aのクロージングでは、多数の書類や手続を同じ日に処理することがあります。
そのため実務では、クロージングに向けてチェックリストを作成して管理すると分かりやすくなります。
たとえば、
などについて、
「担当者」「期限」「準備状況」「完了状況」
を管理します。
最終契約書の条項だけを確認するのではなく、
契約上の義務を実際の作業へ落とし込むことがクロージング準備では重要です。
最終契約締結日とクロージング日は、必ず別の日でなければならないわけではありません。
前提条件への事前対応が完了しており、契約締結と同時に取引を実行できる案件では、
SigningとClosingを同日に行う
こともあります。
たとえば、
午前中に株式譲渡契約書を締結
↓
必要書類を確認
↓
譲渡代金を振込み
↓
着金確認
↓
株式譲渡に必要な手続を実行
という形です。
一方、重要な取引先の承諾、許認可への対応、金融機関との調整、従業員への対応などが残っている案件では、最終契約締結日とクロージング日の間に一定期間を設ける必要があります。
したがって、
「最終契約締結日とクロージング日は必ず異なる」わけではなく、
「一般的には別日に設定されることが
あるが、案件によっては同日クロージングも可能」
と理解するのが正確です。
一般的なM&Aでは、クロージング日に譲渡対象の移転を実行するよう最終契約書を設計します。
ただし、すべての権利が「クロージング日になった瞬間に一律に移転する」と考えるのは正確ではありません。
株式、動産、不動産、知的財産権、契約上の地位などでは、権利移転や第三者への対抗等に必要となる法的手続が異なるためです。
したがって実務では、
「クロージング日を取引実行日として
定め、その日に各譲渡対象について必要な移転・引渡し・対抗要件具備等の手続を行う」
と理解するのが適切です。
特に事業譲渡では、契約承継等の一部がクロージング後まで残ることもあるため、「クロージング=すべての権利関係の処理が完全に終了する日」とは限りません。
クロージング日までに前提条件が満たされなかった場合の取扱いは、最終契約書の内容によります。
たとえば、
などが考えられます。
したがって、
「予定していたクロージング日になったから自動的にM&Aが実行される」
わけではありません。
クロージング前に、前提条件の充足状況を確認する必要があります。
また、クロージング前提条件とクロージング時に提出する書類・実行する事項は、厳密には分けて整理した方が分かりやすくなります。
たとえば、
「必要な株式譲渡承認が得られていること」
は前提条件になり得ますが、
「辞任届をクロージング時に交付すること」
はクロージング時の実行事項として定めることがあります。
この区別をしておくと、クロージングチェックリストも作成しやすくなります。
クロージングが完了しても、売主と買主の契約関係がすべて終了するとは限りません。
たとえば、
などは、クロージング後も続くことがあります。
特に事業譲渡では、クロージング時点ですべての取引先との契約切替えが完了しておらず、その後数か月かけて売主と買主が協力して対応することがあります。
中小M&Aガイドラインでも、クロージング後について、譲受側による事業の引継ぎが円滑に行われるよう支援することの重要性が示されています。
つまり、
クロージング=M&Aの取引実行
ではありますが、
クロージング=売主と買主のすべての義務が終了する日
とは限りません。
最終契約書に基づいて株式や事業などの譲渡を実行し、買主から売主への譲渡代金の支払いなどを行うことで、M&Aを実行する手続です。
最終契約締結は、売主と買主がM&Aの最終的な取引条件について契約することです。
クロージングは、その契約に基づいて譲渡対象の移転や譲渡代金の支払いなどを実行することです。
必ずしも同じではありません。
最終契約締結後に前提条件を満たし、その後クロージングを行う案件では別日になります。一方、必要な条件が整っている場合には、最終契約締結とクロージングを同日に行うこともあります。
クロージングを実行するために、最終契約書であらかじめ定める条件です。
必要な社内承認、第三者承諾、許認可等への対応、表明保証の正確性、クロージング前の義務の履行などが設定されることがあります。
案件によって異なりますが、譲渡対象の移転に必要な手続、譲渡代金の支払い、必要書類の授受、役員関係手続、登記関係書類の授受などを行います。
譲渡代金の支払い、株式の譲渡に必要な手続、株主名簿の名義書換えに必要な手続、株券が発行されている場合の株券交付、役員関係書類の授受などを行うことがあります。
具体的な手続は対象会社や契約内容によって異なります。
必ずしもそうではありません。
重要契約についてはクロージング前に必要な承諾を取得し、それ以外についてはクロージング後も売主と買主が協力して承継・切替手続を進めることがあります。
最終契約書の内容によります。
クロージングの延期、放棄可能な前提条件の放棄、契約で定めた解除権の行使などが問題になります。
残ることがあります。
業務引継ぎ、契約承継への協力、経営者保証への対応、競業避止、秘密保持、収益・費用の清算、表明保証違反に対する補償などがクロージング後も継続する場合があります。
M&Aのクロージングとは、
最終契約書に基づいて株式や事業などの譲渡を
実行し、その対価となる譲渡代金の支払いなどを行うことで、M&Aを実行する手続です。
M&Aの基本的な流れは、
最終契約締結
↓
クロージング前提条件への対応
↓
前提条件の充足確認
↓
クロージング
↓
クロージング後の義務の履行
となります。
ここで重要なのは、
最終契約締結とクロージングを混同しないこと
です。
最終契約締結は、M&Aの最終的な条件について契約することです。
クロージングは、その契約に基づいて株式や事業などの譲渡対象と、その対価となる譲渡代金の支払い等を実行することです。
そのため、
Signing=契約
Closing=実行
と整理すると分かりやすいでしょう。
最終契約締結後に必要な前提条件を満たし、クロージング日に双方が必要な書類・手続を確認したうえで取引を実行するのが基本的な流れです。
ただし、最終契約締結とクロージングを同日に行う案件もあります。
また、クロージングが完了したからといって、すべての義務が終了するわけでもありません。
事業譲渡における契約承継、業務引継ぎ、経営者保証への対応、収益・費用の清算、表明保証違反に対する補償など、クロージング後も継続する義務があります。
したがってM&Aでは、
の4つを分けて整理することが重要です。